海の向こうの風景

地平の更にその海の向こうに生きて来た日々

海の外に憧れ、そこにひたすら生きて来た。五大陸、四十数ヶ国に旅し、途中、サウジアラビアと米国に約八年間住み着いたものの、年月を重ねると望郷の念、止み難し。その四十有余年を振り返り長い旅を終えることとした。

そはドイツ

“ドイツ平原”という。在職中、最も足繁く訪問した国にある。その国土は南のアルプスから北の北海、バルト海に向けてなだらかに傾斜し東西に広がっていく。広大な平地である。 北部海岸は海水面すれすれの低地で北海側の沿岸を特にワッデン海という。引き潮時…

Parkways

休日にはParkways(乗用車専用の高速道)を運転するのが好きだった。2000年台初頭の話だ。今でも緑のトンネルを潜って走り抜ける光景を思い出す。まるで映画のシーンの中にいるような感覚に浸れた。 事務所のあるマンハッタンと自宅のあるマンハッタン北部ウ…

オスマントルコの魅力

トルコは五指に入る思い出多い国である。トルコに興味を覚えたのは塩野七生の著作が発端である。「海の都の物語」に始まる。ヴェネチア(697-1797)の盛衰である。その交易の歴史である。「コンスタンテイノープルの陥落」(1453)、「ロードス島攻防記」(1…

はるかなり土漠行(5)リヤド徒然記 1994.02.03記

<1994年サウジアラビア駐在時の随想を原文のまま転載> 首都リヤドから東部アラビア湾に面するアルコバールまで車を駆って往復することしばしばであるが、片道400Km、所要3時間超の土漠行はさしも文明の利器にても疲労困憊す。道行き目を楽しませてくれるも…

中世王権社会に暮らす密かな喜び(4)リヤド徒然記 1994.01.27記

<1994年サウジアラビア駐在時の随想を原文のまま転載> 過去へのタイムマシンに乗りたければサウジアラビアへ来い、未来のタイムマシンは東京にある、と常々考えている。 サウジアラビア王(初代、第7代) この両極端を行き来する自分がSF小説の主人公の一…

教会建築に見る西欧権威主義とイスラム精神主義(3)リヤド徒然記1994.01.20記

西欧諸都市に遺る教会建築はどれをとっても荘厳にして威圧的であり、とても好きになれません。 ゴシック建築の粋なぞと賛美するような代物では決してないにもかかわらず、皆して休暇旅行の機会に訪れ、さぞや素晴らしいと嘆息し、自国の貧相な現代建築に思い…

黄金色の王城、豊穣の地 リヤド徒然記(2)1994.01.13記

<1994年サウジアラビア駐在時の随想を原文のまま転載> 火の海というべきか、黄金色の海というべきか、砂漠の上に忽然と輝き現れるリヤドの夜の俯瞰は、おそらく宇宙都市を想起するに相応しいのであろうが、むしろ歴史に燦然と足跡を残したイスラム帝国の王…