海の向こうの風景

地平の更にその海の向こうに生きて来た日々

海の外に憧れ、そこにひたすら生きて来た。五大陸、四十数ヶ国に旅し、途中、サウジアラビアと米国に約八年間住み着いたものの、年月を重ねると望郷の念、止み難し。その四十有余年を振り返り長い旅を終えることとした。

トリスタンとイゾルデの国

「トリスタンとイゾルデ」、西欧ではあまりに有名な古くより伝えられる恋愛物語である。イングランド南西部のコーンウォールの騎士トリスタンとアイルランドの王女イゾルデの恋物語である。そのストーリーは説明するまでもないであろう。ただ、本文には関係…

Passport Control

入出国審査での審査官の対応に訪問国の国柄が反映される、と勝手に思い込んでいるだけかもしれないが、随分と違いがある。 当局の指示によるものか、あるいは審査官個人の性格によるものか、いずれも有り得るだろうが、その国に対する印象が随分と変わってく…

雨の情感

梅雨の季節は良し悪しである。暑熱と湿気に不快感もあるが、しとしと降る雨とそれがもたらす涼気が心を穏やかにしてくれる良さもある。そういう時は田圃の稲達までが嬉々としているように映る。蛙も一際(ひときわ)五月蠅く鳴く。これはこれで風物だ。 東南ア…

古人も多く旅に死せるあり

日が長くなり、初夏の青空とそこに浮く片雲を眺めていると無性に旅に出たくなる。若い時は必ずそうしたものだ。片雲の風に誘われて遠く見知らぬ地に何か夢を拾えるような気がしたのである。 この歳になると流石にそれを求める訳にはいかない。無論、腰も挙が…

西欧人をいじる密やかな楽しみ

フランスを書く気になれない。彼我の心理的な乖離が大き過ぎるからである。気が向いた時にしよう。 欧州にも白人と非白人地域がある。それでも相互に複雑な思いを抱いているがうまく対処している。アルプスの北は概ね白人地域と言っていいだろう。その南、あ…

ロシアより愛をこめて

ショーン・コネリーやダニエラ・ビアンキの話ではない。 ロシアはやはりビジネスで訪れる国では無い。当時はそう思った。ビジネスなんてやっている場合では無い。至る所、歴史と芸術の精が纏わりついているようで、かつ、こういうのを大国というのだろう、と…

宗教と自然観(6)リヤド徒然記 1994.02.10記

<1994年サウジアラビア駐在時の随想を原文のまま転載> アジア的自然感と中東におけるそれとでは根本的に相違があって当然と考えるが、果たしてそうなのであろうか。 アジアにおいては太平洋性気候によりもたらされる十分過ぎる降雨、それに育まれた緑豊か…