海の向こうの風景

地平の更にその海の向こうに生きて来た日々

”太郎鮭”は、海の外に憧れ、そこにひたすら生きて来た。老いても鮭であった。回帰の遺伝子がしっかりと作用した。五大陸、四十数ヶ国に旅し、途中、サウジアラビアと米国に約八年間住み着いた。回遊は四十有余年に及ぶ。今、回遊を終え、故郷の清流番匠川が目前にある。鮭の回帰行動にこそ僻地対策の根本が存するのでは無いか、太郎鮭の想いである。老いた鮭の回遊の旅を振り返ってみたい。

古人も多く旅に死せるあり

日が長くなり、初夏の青空とそこに浮く片雲を眺めていると無性に旅に出たくなる。若い時は必ずそうしたものだ。片雲の風に誘われて遠く見知らぬ地に何か夢を拾えるような気がしたのである。 この歳になると流石にそれを求める訳にはいかない。無論、腰も挙が…

西欧人をいじる密やかな楽しみ

フランスを書く気になれない。彼我の心理的な乖離が大き過ぎるからである。気が向いた時にしよう。 欧州にも白人と非白人地域がある。それでも相互に複雑な思いを抱いているがうまく対処している。アルプスの北は概ね白人地域と言っていいだろう。その南、あ…

ロシアより愛をこめて

ショーン・コネリーやダニエラ・ビアンキの話ではない。 ロシアはやはりビジネスで訪れる国では無い。当時はそう思った。ビジネスなんてやっている場合では無い。至る所、歴史と芸術の精が纏わりついているようで、かつ、こういうのを大国というのだろう、と…

宗教と自然観(6)リヤド徒然記 1994.02.10記

<1994年サウジアラビア駐在時の随想を原文のまま転載> アジア的自然感と中東におけるそれとでは根本的に相違があって当然と考えるが、果たしてそうなのであろうか。 アジアにおいては太平洋性気候によりもたらされる十分過ぎる降雨、それに育まれた緑豊か…

そはドイツ

“ドイツ平原”という。在職中、最も足繁く訪問した国にある。その国土は南のアルプスから北の北海、バルト海に向けてなだらかに傾斜し東西に広がっていく。広大な平地である。 北部海岸は海水面すれすれの低地で北海側の沿岸を特にワッデン海という。引き潮時…

Parkways

休日にはParkways(乗用車専用の高速道)を運転するのが好きだった。2000年台初頭の話だ。今でも緑のトンネルを潜って走り抜ける光景を思い出す。まるで映画のシーンの中にいるような感覚に浸れた。 事務所のあるマンハッタンと自宅のあるマンハッタン北部ウ…

オスマントルコの魅力

トルコは五指に入る思い出多い国である。トルコに興味を覚えたのは塩野七生の著作が発端である。「海の都の物語」に始まる。ヴェネチア(697-1797)の盛衰である。その交易の歴史である。「コンスタンテイノープルの陥落」(1453)、「ロードス島攻防記」(1…