海の向こうの風景

地平の更にその海の向こうに生きて来た日々

海の外に憧れ、そこにひたすら生きて来た。五大陸、四十数ヶ国に旅し、途中、サウジアラビアと米国に約八年間住み着いたものの、年月を重ねると望郷の念、止み難し。その四十有余年を振り返り長い旅を終えることとした。

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

黄金色の王城、豊穣の地 リヤド徒然記(2)1994.01.13記

<1994年サウジアラビア駐在時の随想を原文のまま転載> 火の海というべきか、黄金色の海というべきか、砂漠の上に忽然と輝き現れるリヤドの夜の俯瞰は、おそらく宇宙都市を想起するに相応しいのであろうが、むしろ歴史に燦然と足跡を残したイスラム帝国の王…

コーランの音色に魅せられて リヤド徒然記(1) 1994.01.06記

筆者は1991/6 ~ 1995/1の間、湾岸戦争終結直後よりサウジアラビアの首都リヤドに駐在した。この時に綴った随想(*)を書架の奥に放置していたことを思い出した。何分、若い頃に綴ったもので読むに堪えない部分もあるが、そのままをここに転載し、当時の日々…

伏流水 アメリカ回想(1)

2000年を迎えた時、”新世紀”に”新生活”が始まる、そう思いたかった。人の人生でそうそうあるタイミングではない。この年の6月、ニューヨークに赴任した。実際は、2000年は20世紀最後の年で、新生活は”世紀末”に始まったと言う訳だ。この一年差は微妙である。…

海の向こうの不確かな美 徒然記(1)

昔から芸術作品というものにどう接したら良いのか教えを請いたかったものだが、ついに果たせぬままである。 絵画や彫刻の類においては人一倍鑑賞下手なのである。自慢するようで嫌味かもしれないが、世界中の数々の美術館、博物館を訪れた。だが立ち尽くす…

鬼が曳く サウジアラビア回想(3)

薄汚れた手荷物一つを小脇に大事そうに抱え、安っぽい皺だらけの長袖シャツを押し込んだよれよれのズボンは腰がちぎれんばかりにベルトできつく締めつけられていて、おろおろするばかりの浅黒い肌をした痩せた少年達。スカーフで髪を深く被い隠し、他人に肌…

鬼が曳く サウジアラビア回想(2)

アラビア半島の東西の沿岸地域はいずれも冬期を除けば湿度が尋常ではなく高いが、リヤドは通年を乾燥しきって灼熱下でも汗さえ存在を許されない。極寒の極地で瞬時に水が氷るがごとく、この地では水分は瞬時に蒸発してしまう。急に息を吸い込もうなら即座に…

鬼が曳く サウジアラビア回想(1)

1990年代初頭、今日もまた善男善女が曳かれていく。 視界を遮るものとてない殺伐たる赤茶けたあるいは灰褐色の不毛の土漠の果てに、今日も一日ひたすら地表のものすべてと大気を焼き尽くしてきた白色の太陽が、漸く(ようやく)橙色に色を和らげて、地表に…