薄汚れた手荷物一つを小脇に大事そうに抱え、安っぽい皺だらけの長袖シャツを押し込んだよれよれのズボンは腰がちぎれんばかりにベルトできつく締めつけられていて、おろおろするばかりの浅黒い肌をした痩せた少年達。スカーフで髪を深く被い隠し、他人に肌…
アラビア半島の東西の沿岸地域はいずれも冬期を除けば湿度が尋常ではなく高いが、リヤドは通年を乾燥しきって灼熱下でも汗さえ存在を許されない。極寒の極地で瞬時に水が氷るがごとく、この地では水分は瞬時に蒸発してしまう。急に息を吸い込もうなら即座に…
1990年代初頭、今日もまた善男善女が曳かれていく。 視界を遮るものとてない殺伐たる赤茶けたあるいは灰褐色の不毛の土漠の果てに、今日も一日ひたすら地表のものすべてと大気を焼き尽くしてきた白色の太陽が、漸く(ようやく)橙色に色を和らげて、地表に…